移動祝祭日

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6日目・雨、生活と旅

  昨日は朝から雨だった。晴れている時は少し汗ばむくらいで、風は冷たく空が青くて 建物たちの輪郭がはっきりしてそれはそれは美しいのだけど、雨が降って太陽か隠れてしまうと途端に寒くて寒くて「ロシアっぽい......!」と歯をガタガタ鳴らしながら興奮した。18℃てで書いてあるけど絶対に嘘、日本の18℃はもっと暑い、日本がおかしいのかな、そうなんだろうな。緯度や町並みで気温の感じ方がこうも変わるのは不思議な気持ちだ。

  ロシアでは9月は雨季なんだけれど、日本に傘を置いてきてしまっていたのでダメだった。学校は普通にあるのでとりあえず濡れながら登校した。学校へはバスと路面電車を乗り継いで行く。初日に買ったカードがあれば地下鉄もバスも路面電車もタッチするだけで利用することができる。雨なので混雑していたけれど登校にも慣れてきた。

  昨日から始まった6人での授業だけど、今日は4人だった。男の子がふたり来ていなくて、ひとりは腹痛、もうひとりはモンスターハンター?をやっているらしい。今日も語彙をやって モスクワの歴史に関するテキストを読んだ。

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「あなたの故郷でオススメの場所は?」とか、「あなたの故郷は何年前に誰が設立したの?」みたいなことをたくさん聞かれて、ロシア語以前に自分の住む町のことを全然知らないなあと少し反省した。そういえば学生証が届きました、ウレシイ

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  授業が終わった後は本当はエクスカーションがあるはずだったんだけど、天気が悪すぎて中止になり(ボスは「これがモスクワの天気だ!」と陽気だった)、女の子たちと こちらですごくメジャーな喫茶店を冷やかして、傘とお酒とパンとお菓子を買って ついでに換金もして帰宅した。帰りのバスから降りる時に多分おばさんに財布をすられてしまった。中には800円分ぐらいの現金しか入っていなかったのだけど、出発前にお母さんに買ってもらった財布だったのでショックだ。ショルダーバックの中に入れていて、チャックも閉めていたはずなのにどうして、と思う。もう少し気を引き締めなくてはな。

  夕食は女子6人で酒盛りだった。視聴率ゼロでめちゃくちゃ飲んでしまってしたたか酔っ払った。各自好きな音楽をかけながら持ち寄った食べ物をつまんで、楽しい夜だったな! 酔った女の子と普段からデリカシーも情緒もない男の子のツイッター上での絡みが地獄だった。なんというか、致命的に面白くない自虐に他人を巻き込んで誰も幸せにならないやつをやって責任も取らない人って、いますよね、違う世界の人だ......と思って過ごしているけれど、違う世界と交わらずに生きていけるわけもない。ウウウ

 

  さて、わたしのこの滞在は旅とは少し違う。わたしはここに、生活をしに来ている。旅というのは、自分が主役で、自分の目的(例えば  赤の広場を見たい、ボルシチを食べたい、マトリョーシカを買いたい、など)を果たすためのもので、非日常的なものだ。日常的なこと、たとえばお風呂に入ることやスーパーに行くことは旅のための手段でしかない。わたしがここでいう 生活 というのは、その土地に住んでいる人々を主役に据えて 彼らの日常を覗き見させてもらうこと、自分をその中に紛れ込ませることだ。

  寒さで鼻を真っ赤にして だけど微笑みを浮かべながら路面電車を待つ優美な人、祈りみたいに晴天柄の傘をさす針金みたいな女性、傘なんかささないでまっすぐに立つ若者、彼の周りだけ雨が避けているようだった、曇った窓ガラスを丁寧に人差し指でぬぐって外に目をこらすご老人、もう二度と会うことのない、たとえすれ違ってもそうだとはわからない匿名の人々。そういうひとたちに それでも一度出会ってみること、そういう人たちの中で毎日を過ごしてみること。

  もちろん、どちらの方がいいとか、そういう話をしているのではない。だけど、観光地で観光客向けの名物料理を食べるより、学食のよくわからない安い料理をこちらの学生と同じように食べて、晴れた日には大学の前の広場で分厚い本を読みたい。同じパン 同じ本でも 何か違うところがあるはずだし、同時に何か同じところがあるはずで、今のわたしはそういうものを求めている。骨の折れることかもしれないけれどとても刺激的な経験になるだろうと期待している。とはいえちゃっかりひと通りは観光地行ったんですけどね。ワハ   生きるぞ!