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退職

        退職しました。1年半勤めた個人指導塾だったんですけれど、だんだん授業以外のお給料の審査が厳しくなってきて結局ブラックと変わらないのでは、となってしまったり、あとはこの月末からロシアに1ヶ月留学に行って  帰ってきたあとは大学の近くに住もうと思っていることから、退職になりました。夏期講習が終わり次第という感じなんですが、受験生からしたら いまから受験本番というときに大迷惑な話ですね。まあ言うまでもなくわたしはわたしの生活が一番大事なのでどうしようもないことではあるんですけれど。

 

        それで、待遇面や社員の感じをみていると、わたしはけっこう長い間自分のアルバイト先のことを好きじゃなかったんですけど(なにしろLINEグループの名前が「スマイル王国」だったりする)、ではもっと早く辞めておけばよかったのか  時間の無駄だったのかというとあんまりそうでもなくて、それはアルバイト先で出会えた人たちとわたしを慕ってくれる生徒がいるからです。

        率直に言うと、待遇はけっこう悪かったと思う、仕事量は多いし そもそもの授業給は安いし  社員は甘ったればっかりだし。だけど今振り返って考えてみると、まあいいか、と思うのですよね。なぜなら職場の人たちと出会えたから。あの人に可愛がられて、あの人にいじられて、あの人とは一緒にライブに行ったりお酒を飲むような仲になった。この1年半を振り返って、職場の人たちなしの日常はあんまり考えられない。

 

        講習期間を除いて わたしが1年半で担当した生徒はたぶん12人いて、スッと志望校に合格していく子もいれば、最後の最後まで苦しんだ子もいる。基本的には 「落ちてもわたしのせいじゃないけど受かってもわたしのおかげじゃない、最終的に勉強するのは本人」 というスタンスで  言うことを言い、やることをやったあとはわりと軽い気持ちで彼らを見守っていたから、合格した子や卒業した子が持ってきてくれるお菓子の包みや手紙なんかにしっくりきていなかったのだけど、この2月から担当している高3の男の子は 途中で担当を外れることになってしまい、なんというか自分でもびっくりしてしまうほど心残りになっていた。

 

        それで、手紙を書いた。夏期講習は君が思っているよりかなりハードだったので、ひとまず自分を褒めて自信に思ってほしいということ、こんな時期に退職になって申し訳なく思っているということ、しっかり引き継ぎをしたので安心して欲しいこと、わたしは君のことをめちゃくちゃ応援していること、いつでも頼ってほしいということ。ほんとうはだめなんだけど、メールアドレスを添えた。別れの手紙を書いたのは初めてで、「では、お元気で」と終わる手紙を書いたのも初めてだった。

 

        そしたら、驚くことに、その日のうちにお返事がきた。

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わたしが大学でロシア語を勉強しているのを知って、わざわざ調べて ロシア語で「ありがとう」て書いてくれたのかな、3つの言語でこんなにカラフルに大々的に感謝を述べられたことも似顔絵をプレゼントされたことも初めてで、字の汚さも色塗りの雑さも めちゃくちゃ心に刺さってしまった。

全部大好きです。(愛の告白ではありません笑)本当ですよ!! 

と彼は書いてくれたけど、そんな そんなそんなそんな  そんなことがあっていいのだろうか、そんな人間だったのかな そんな講師だったのかな、すごいな、ここで働いて彼の助けに少しでもなれたなら本当によかったな。

 

        「では、お元気で」と書いたわたしに彼が返してくれたのは「また会う日まで  バイバーイ!!」というもので、わたしの1年半やお節介でお人好しな部分を 最後に全部まるっと肯定された気分になったのでした。 至極当たり前のことのようですが、人と出会うってすごいし 誰かの人生に痕跡を残せることってすごい。いい経験をさせてもらったし、あんまりドライに物事を見るのをやめて いろんなことに一生懸命になれそうな気がする。 職場では嫌な思いももちろんたくさんしたんだけど、やっぱりわたしは結果オーライの星の下に生まれてきているんだなあ などと思ったのでした。 ワハハ

 

        追伸: これだけ大仰な別れをしておいて お人好しなので辞めるって言い出せなくて 今日また違う生徒の小論文の添削に出勤します、嘲笑ってほしい。